漫画家の楳図かずおさん(左)と大の楳図ファンだというエッセイストの酒井順子さん(右)
「恐怖マンガ」というジャンルを確立し、多くの作品を世に送り出してきた、漫画家の楳図かずおさん。27年ぶりの新作は、絵画でストーリーを示していく新しい試み。「未来を予言している」ともいわれる楳図作品が生まれた背景について、大の楳図ファンである酒井順子さんが迫ります(構成=篠藤ゆり 撮影=藤原絵里奈)

〈マンガにおけるカンヌ〉で「遺産賞」を受賞

酒井 兄が『週刊少年サンデー』を読んでいた影響もあり、子どもの頃から楳図マンガの大ファンです。今日は満を持して、『楳図かずお 美少女コレクション』刊行時に限定販売されたTシャツを着てきました!

楳図 わあ、ありがとうございます!

酒井 楳図さんはおいくつになられたのでしょう。

楳図 9月で87歳になりますね。梅雨時は、髪の毛がピンパラピンパラヘナヘナしちゃって。

酒井 あらら(笑)。2022年に東京と大阪で開催された「楳図かずお大美術展」では、27年ぶりとなる新作『ZOKU-SHINGO』を発表し、6月にはこの作品を描かれたことで手塚治虫文化賞の特別賞を受賞されました。101点に及ぶ連作絵画をわずか4年で描き上げたそうですが、80代になってからのお仕事ですし、すごく体力を使われたのではないでしょうか。

楳図 僕はなるだけ体力を使いたくないので、作業は1日4時間と決めて、パパパッと上手に描き上げました(笑)。これは、まだ駆け出しで、大阪の貸本出版社で作品を発表していた23歳頃に身につけたワザです。

お金を得るには、たくさんマンガを描く必要があった。でも、そのせいで肩こりと不眠症に悩まされていたので、よい方法はないかと模索したんです。どんな場合も手抜きはいけませんから、ササッと描き、かつ丁寧にという技術を会得しました。集中です。