『わたしは真悟』(1982年)
少年さとると少女まりんの出会いが、ある日突然、産業用ロボットに意識を芽生えさせることに。AI時代を予見させる長篇SFマンガ

楳図 知りませ~ん(笑)。実は賞を獲る少し前に、別件で「展覧会をやりませんか」と声をかけられていたんです。その時はあまり乗り気じゃなかったけど、受賞したことがやはり嬉しくて、「やるわー!」となりました。それと、展覧会の関係者に「もっと未来を見たい」と言われた瞬間に、未来といえばロボット、それなら『わたしは真悟』だなと頭に浮かんで、新作のストーリーができてしまったんです。

酒井 えぇっ! それは「降りてきた」という感じですか?

楳図 うーん。「降りてくる」というのはよくわからないです。というより、自分の中から滲み出てくるのだと思います。

酒井 経験の蓄積から出てくるもの、ということですね。

楳図 そうです。それで、出てきたものに対して、「どうかなぁ」という自分の声が聞こえたら作品にはしない。「それいいね」と聞こえたら、大手を振って前に進む。これだって、たくさん経験しているほうが、直感的に「これはいける」とわかりやすいということだよね。そうじゃなかったら、占い師になっちゃうもん。

酒井 新作が、マンガではなく連作絵画なのはなぜでしょう。

楳図 ストーリーを絵画で展示するやり方が新しいんじゃないかなと思って、今回はそうしてみました。僕は、いつも新しいことをやりたいんです。マンガはいっぱい描いてきたからね。