「一番多い悩みは、《親が亡くなったら、自分がきょうだいの世話をしなければいけないのか》ということ」(撮影:藤澤靖子)
高齢の親が自立できない子を養う「8050問題」。その負担は、きょうだいにまで及ぶことが少なくありません。取材を続ける池上正樹さんにも、ひきこもりの末に亡くなった弟がいました。当時を振り返って感じた「家族としてできること」とは(構成:古川美穂 撮影:藤澤靖子)

親が健在なうちは問題が表面化しない

自立できないきょうだいに関する相談は、私が携わっている「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」にもたくさん寄せられています。メディアなどで「8050問題」を知ったのをきっかけに、連絡をくれる方もいるようです。

一番多い悩みは、「親が亡くなったら、自分がきょうだいの世話をしなければいけないのか」ということ。親が健在なうちは、問題はなかなか表に出てきません。しかし親が認知症になったり、病気で入院、あるいは亡くなったりすると、問題や負担が一気にきょうだいに降りかかってくるのです。

たとえば、ひきこもる本人に医療が必要な状態でも、病院へ行きたがらない。入院できたとしても、退院後、どこに住まわせたらいいかわからない。そんなふうに日々判断を求められ、親が動けないので自分がやらざるをえない、という状況に追い込まれてしまいます。

そもそも支援が必要なひきこもり状態であることを、家族も本人も認識していない場合がほとんどです。ひきこもりというと、不登校などをきっかけに家から出られなくなり、一度も働いた経験がない若者のイメージが強いからかもしれません。

しかし実像は少々異なります。厚労省の研究班は、ひきこもりの定義を、〈社会参加をしていない状態〉が6ヵ月以上続くこととしている。ただ実態は、期間も外出できるかできないかも関係なく、さまざまな事情から他人との交流を避けざるをえなくなっている状態なのです。

また、先日発表された内閣府の調査では、40~69歳のひきこもりの方のうち約9割が就労経験者でした。もともと社会に出ていたけれど、そこで心身の健康をかされたり、尊厳を傷つけられたりした人が多い。

そういった社会側の問題が引き金となってひきこもることから、誰の身にも、何歳からでも起こりうると考えるべきでしょう。