スーファミ時代に飛躍したFF

そんなFFが飛躍するのは、スーパーファミコン時代になってからです。スーファミの発売から約半年後に発売された『FF4』は144万本の売り上げでした。

144万本というと、前作『FF3』と同じぐらいじゃないか、飛躍とはいえないのでは? と思われるかもしれません。

『国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか』(著:渡辺範明/イースト・プレス)

しかし、何年ものブームを経て日本中の家庭に普及しきった環境での「ファミコンの140万本」と、新ハードとして発売した直後の「スーファミの144万本」では意味合いがまったく異なるのです。

『FF4』発売時点でのスーファミの販売台数のデータがないと正確な値まではわかりませんが、おそらくスーファミ初期における『FF4』の装着率(スーファミ所有者のうち何%が『FF4』を所有しているか)はかなり高かったと思われ、このタイミングでFFは「メジャータイトル」におどりでたといえます。

『FF4』の発売当時、僕は中学1年生でしたが、それまでFFシリーズは「好きな人は好き」というややマニアックなシリーズというイメージだったはずが、『FF4』では「スーファミを持っていたら『FF4』も持っているのが当然だよね」という感じに、友達連中のムードが一変したことをよく覚えています。

スーファミの性能傾向とFFシリーズの美麗グラフィック路線の相性はベストマッチで、せっかく買った新ハードのスペックを実感したいというニーズにもFFは大いに応えました。

その結果としてFFはスーファミ時代に大きく売り上げをのばし、『FF4』に続く『FF5』では245万本、『FF6』では255万本まで達します。同じくスーファミで発売された『ドラクエ5』は280万本、『ドラクエ4』は320万本ですから、こうなるとFFは名実ともにドラクエのライバルシリーズになったといえるでしょう。

ただし、王者ドラクエの牙城はさすがに高く、あと一歩のところでFFがそれを超えることはできずにいたのも事実です。