「FF」はスーファミの発売から約半年後に発売された『FF4』で飛躍を遂げることに(写真:婦人公論jp編集部)
『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』シリーズは「国民的ゲーム」として、日本のカルチャーに大きな影響を与えています。かつてはスクウェア・エニックスにも在籍し、現在はゲームデザイナー兼プロデューサーとして活躍中の渡辺範明さんは『ドラクエ』と『FF』の功績をあらゆる角度から検証しています。渡辺さんいわく「王者ドラクエの牙城はさすがに高く、あと一歩のところでFFがそれを超えることはできずにいた」そうで――。

ファミコン時代のドラクエとFFはライバル?

「次世代ハード戦争」の勝敗を決定付けるひとつの契機でもあった『FF7』。本作は、ドラクエとFFの関係を語るうえでも、劇的な一作でもあります。ここで、両シリーズの販売本数を初代『ドラクエ』と初代『FF』から振り返ってみましょう。

1986年にファミコンで発売された初代『ドラクエ』の販売本数は150万本です。いま150万本という数字をみると「最初からいきなり大ヒット」という感じがしますが、実は当時のファミコン市場は、社会現象レベルの「ファミコンブーム」の最中でありながらゲームソフトのラインナップがまだそれほど飽和しておらず、今では考えられないほどの「出せば売れる」状態でもありました。

例えば、初代『ドラクエ』と同じ年に販売されたバンダイの『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』はそれほど歴史に残る大ヒットタイトルというイメージはないですが、これも実は100万本を超えるミリオンセラーなのです。

というわけで、初代『ドラクエ』は同時代的にみると、歴史的大ヒットという数字ではなかったのですが、つづく『ドラクエ2』で240万本、『ドラクエ3』で380万本と、タイトルを出すたびに飛躍を遂げていき、現在の国民的タイトルの地位を築いていったわけです。

それに対してFFシリーズの販売本数を追ってみると、1987年の初代『FF』は52万本なので、同年発売の『ドラクエ2』と比べると5分の1ぐらいの本数であり、初代『ドラクエ』と比べても3分の1ぐらいの販売本数からスタートしています。

これが「『ジャンプ』と密にコラボし、スタープレイヤーが集まって作ったドラクエ」と「ルーキーたちが若い情熱と才能で作ったFF」のスタートラインの差ともいえますね。

その後、1988年発売の『FF2』が76万本、1990年発売の『FF3』が140万本と、FFシリーズも順調に数字を伸ばしていきますが、常にドラクエにはダブルスコアの差をつけられており、とても「ライバル」といえるような状況ではなかったことがわかります。

ファミコン時代にはドラクエのフォロワー的位置付けのRPGタイトルがいくつも発売され、FFはそのなかで頭ひとつ抜けたクオリティで注目は集めていたものの、販売本数の実績でいうとドラクエと肩を並べる存在ではなかったのです。