政治家の公約とホストのささやき
なんなんだ、これは。
これだけ働く意欲のある女がいて、運よく稼ぎ口にありつけているにもかかわらず、預け先一つ見つからないなんて、いったいどうなっちまってんだい。
私は江戸っ子口調で啖呵を切りそうになった。保育園が見つからない場合、仕事を失うのは高確率で女である。「男女共同参画社会を」とか「女性が輝く社会に」とか、政治家の言うことはホストの言う「愛してる」より軽いんじゃないか。
私は嘆息した。
そして、にわかに子の性別を知るのが怖くなってきた。
いや、性別を知るのが怖いのではない。お腹の子が女子だと知ることが――つまり、この社会に女児を産み落とすことが、怖くなったのである。
生きてるだけで女にとってハードモードなこの国で、女児を産みたくない。
※本稿は、『わっしょい!妊婦』(著:小野美由紀/CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。
『わっしょい!妊婦』(著:小野美由紀/CCCメディアハウス)
がんばれ、生きろ。どすこい女!
すべての女にハードモードな社会で、子を産むということ。
35歳、明らかに〈ママタイプ〉ではない私に芽生えたのは「子どもを持ちたい」という欲望だった。このとき、夫45歳。子どもができるか、できたとしても無事に産めるか、産んだとしてもリタイアできないマラソンのような子育てを夫婦で走りきれるのか。それどころか、子どもが大きくなったとき、この社会は、いや地球全体は大丈夫なのか? 絶え間ない不安がつきまとうなかで、それでも子どもをつくると決めてからの一部始終を書く妊娠出産エッセイ。