私は自分の不安を、誰かに、できるなら夫に受け止めて欲しかったのだ(写真はイメージ/写真提供:photo AC)
都会生まれ、都会育ちの35歳。仕事も軌道に乗っている。今の時代、この社会で子を産むなんて現実的ではない。そう信じてきた作家の小野美由紀さんに、突然湧いてきた「子どもを持ちたい」という欲望。妊活を経て妊娠し、つわり、出生前診断、母としての自覚……次々と問題が押し寄せる中、近所の助産院の検診に行ってみたところ――。

不安な気持ち

「あっ、動いたよ」

「元気だねえ」

助産師さんのふわっとした声が、ガリガリとした気持ちを溶かしていく。

素人目にはまだ、ざらざらとした影でしかないそれに対し、彼女は「かわいいね」「かわいいかわいい」と、目を細めながら繰り返し言ってくれ、私はお腹の子というより彼女のその言い方に、なんだか胸をぐっと掴まれて泣きそうになってしまった。命を守るための暗中模索の日々で、知らずして気持ちが張り詰めていたのだった。

 

帰り道、ふと思った。

ああそうか。
私は自分の不安を、誰かに、できるなら夫に受け止めて欲しかったのだ。