すべての犬に訪れる「老い」。飼い犬の平均寿命は14歳~15歳まで延びたといわれる反面、老化に伴う健康問題や介護とどう向き合うかが飼い主にとっての課題になっています。児童文学作家・今西乃子さんは、足首から下が切断されるなど、虐待の跡が残る生後2か月の柴犬・未来を動物愛護センターから引き取り、育ててきました。その未来、16歳を過ぎたころから老いの兆しが見え始め、今までできたことができなくなるとともに、徘徊や夜鳴きが始まったそうで――。
老犬としてのライフステージの始まり
16歳になり、階段の上り下りができなくなった未来は、私たち夫婦に抱っこされて一階と二階を移動するようになった。
7キロほどの未来を抱いての室内移動は楽勝だ。それでも、チャレンジ精神が強く、昔から自立心旺盛な未来は、自力で階段を上りたいと思っていたようだ。
時折、階段下から寂しそうに二階を見上げては、「キューン」と鳴いた。
その姿は切なく、胸が痛んだが、これが愛犬と共に老いと向き合い、愛犬の老いを受け入れることなのだと思った。
階段が上れなくなった未来は、一日のほとんどを日当たりのいい一階のリビングで過ごすようになった。
これからが本当の老犬としてのライフステージの始まりだ。