無限サークルは役に立たなかった

認知症の犬の「徘徊」はよくあることだが、多くの犬の徘徊は同じ場所でくるくるくるくるすごいスピードで回る「徘徊」。これに対し、未来は広い家の中をトッコトッコとゆっくり歩き回る「徘徊」だ。

前者の「徘徊」には「無限サークル」が効果的だという。

無限サークルとは角をなくした丸いサークルのことで角がないため、このサークルの中に入れれば、安全で、好きなだけ無限に回ることができる。(無理にやめさせると逆にストレスになる)

やがて疲れると寝てしまうので、知り合いの柴犬の老犬もこの無限サークルを利用していた。

しかし、未来の場合はこの手の「徘徊」ではなかったため、無限サークルは役に立たなかった。

それからも思い立ったように、未来は部屋の中をトッコ、トッコと自由に歩き続ける。目もほとんど見えていないはずだが、家具にぶつかることはまったくない。住み慣れた家だから感覚でわかっているのだろう。

「未来!」と呼んでも知らん顔。耳もほとんど聞こえなくなってきたようだ。

さてどうしたものか―。

『うちの犬(コ)が認知症になりまして』(著:今西乃子/青春出版社)