すべての犬に訪れる「老い」。飼い犬の平均寿命は14歳~15歳まで延びたといわれる反面、老化に伴う健康問題や介護とどう向き合うかが飼い主にとっての課題になっています。児童文学作家・今西乃子さんは、足首から下が切断されるなど、虐待の跡が残る生後2か月の柴犬・未来を動物愛護センターから引き取り、育ててきました。その未来、16歳を過ぎたころから老いの兆しが見え始め、今までできたことができなくなるとともに、徘徊や夜鳴きが始まったそうで――。
認知症の昼夜逆転による「夜鳴き」
未来のおうち運動会、イリュージョンに続いて、今度は「夜鳴き」が始まった。夜になると理由もなく「ウォオオオオオオーン!」と驚くほど大声で遠吠えをするのだ。
認知症による「夜鳴き」がついに来たと思った。
当初は一晩で、2、3回だったが、それがだんだんひどくなり、午後9時ごろから午前3時ごろまで、断続的に一晩中続くようになった。「明かりをつける」「ラジオをつける」「抱っこしてあやす」などの対処法も試みたが、どれも効果はない。そこに、おうち運動会が重なり、私は完全な寝不足に陥った。
鳴いては起きて様子を見に行き、ベッドに戻る。そんなことが一晩に数回、しかも毎晩続いた。ダンナが添い寝をしてみたが、それも効果はない。
どこかつらいのか、苦しいのか、痛いのかと思いきや、明け方になればすやすやと気持ちよさそうに寝ている。昼間は鳴き声ひとつ立てない。実にかわいいおばあちゃん犬だ。それが夜になると悪魔に変身!
かかりつけの獣医さんに聞くと、「苦痛で吠えているわけではないですね。認知症の昼夜逆転による夜鳴きです」と言われた。