私自身の体調にも変化が

本人(犬)が苦痛でないなら、それはそれで結構だと思って、その日は、いつものようにサプリメントをもらって帰ったが、未来の夜鳴きはますます激しさを増していった。

その声は一戸建てが並ぶ住宅地にもかかわらず、向こう三軒両隣の隣人にも聞こえるほどのすさまじさだ。

散歩で犬友達に会うと「未来ちゃん、昨日の夜中も鳴いてたね」と言われることも少なくない。みないい人たちなので「ご迷惑をおかけしています」と頭を下げることで事なきを得ていたが、この夜鳴きがいつまで続くのか、誰にもわからない。1年、2年、いや、もっと続くかもしれないのだ。

未来は認知症とはいえ元気だ。まだまだ長生きできる。

やがて、私自身の体調にも変化が表れた。

もともと睡眠の質がよくないうえ、未来の夜鳴きで眠れない日が続き、家の用事で多忙を極めていたある日、突然息ができなくなって、耳がつまったような状態に陥った。

「このままでは死んでしまう」と思うほどの恐怖感と息苦しさだ。

症状は2時間ほどで収まったが、今まで経験したことがない発作に、翌日からあちらこちらの病院に行くも悪いところはなし。

最終的にメンタルクリニックで、うつ病からくる「パニック障害」という診断を受けた。

そのクリニックで開口一番、医者が言った。

「眠れていますか?」

「眠れません」

「精神障害に睡眠不足は一番よくありません。とにかく、きちんと寝ることが大切です」

そう言われ、薬を処方された。

『うちの犬(コ)が認知症になりまして』(著:今西乃子/青春出版社)