次第に追い詰められて
再びかかりつけの動物病院に行って相談すると、「老犬の認知症の夜鳴きで大変な思いをしている飼い主さんは多い」という。
そこで、他の認知症の老犬にも処方している薬を出してもらうことにしたのだが、ここでもまた頭を抱えることになった。
その薬がベンゾジアゼピン系の抗不安薬だったからだ。
確かに、この薬を飲ませれば寝てしまうので「夜鳴き」は収まるだろう。効果も期待できる半面、ベンゾジアゼピン系の副作用の怖さを私は身をもって知っている。
しかし、未来に寝てもらわないと、自分が倒れる……。迷った末、その夜は処方された半分の量を飲ませて様子を見ることにした。
が……、まるで効かない。いつものように夜中に雄たけびが鳴り響いた。
こんなに効果がないのか、と思い、翌日は4分の3錠。すると、ぐっすり寝入って鳴き声ひとつしなくなった。おかげでその日の夜、私はぐっすり眠ることができたが、朝起きて未来を見ると、まだ寝ている。
起こしても起きない。心配になって無理やり起こしたがその日はボーッとして別犬のようだ。フラフラで歩くことができず、尻もちをついたまま、立ち上がれない。
このまま薬を飲ませ続けたら、もっと認知症が悪化して、寝たきりになってしまう。
慌ててかかりつけの先生に電話をすると、「犬によって効き目が違うから、様子を見て量を減らしてください」とのこと。
他の多くの犬も服用しているのだから大事に至ることはないだろうが、夜鳴きが止まっても寝たきりになってしまっては元も子もない。飼い主が寝不足から解放されても、未来がつらい思いをするのは耐えられなかった。
どうすればいいのだろう―。このときの私はかなり追い詰められていた。