国内ナンバーワンの単純泉
鹿児島県出水市の山奥にある一軒宿で、温泉にも取材旅行にもずいぶん慣れてきた頃です。
暑い5月のことで、日帰り入浴でさらりと浸かる予定でした。しかしまあ、もう、どのくらい居座ってしまったことやら。
驚いたのはその透明度でした。ガラスのようで、無重力のような心地。とろけた木造湯船。ごろごろした岩底から湯玉がぷくりと浮いてきます。どっぷり体を沈めて、37〜38度のぬる湯に1時間。
体にはアワがぴちぴちとつき、つるつる肌を滑るなめらかさがパーフェクトでした。「国内ナンバーワンの単純泉」「完璧な湯」と評価される所以です。
その感動と衝撃は、どんな色湯も、どんなにおいの強い温泉も霞みました。
無色透明でもこんなに個性的な温泉があるのか、と。私は湯川内温泉をきっかけに、足元湧出とぬるい温泉が大好きになり、いまも求めて旅行を続けています。