「喉頭挙上筋群」と「呼吸筋群」の強化を

数年前までは、嚥下障害の対策として「口腔ケア」が推奨されていました。細菌が肺に入らないように、口の中を清潔にしておこうという趣旨です。もちろん口腔ケアは大切ですが、実はそれだけでは万全とは言えず、のどの筋トレ、呼吸トレこそが嚥下障害のケアに効果的なことがわかってきています。

1年に何度も軽い誤嚥性肺炎で入院していたという80代前半の患者さんが、私のクリニックに助けを求めていらっしゃいました。その方に食事の見直しとのどの筋トレをアドバイスし、実践していただいたところ、数ヵ月で誤嚥トラブルがなくなり、肺炎で入院することもなくなったのです。同じような患者さんが何人もいらっしゃいます。

トレーニングの内容は、大きく分けて2つ。のど周辺にある「喉頭挙上筋群」と、肺にある「呼吸筋群」を強化するものです。

喉頭挙上筋群は先述のとおり、のど仏を持ち上げ、喉頭を挙上して喉頭蓋を後ろに防波堤状に倒す(気管をふさぐ)ための筋肉。呼吸筋群は肺まわりの「胸郭」にあり、呼吸のたびに収縮弛緩する筋肉を鍛えることで、呼吸機能を改善できます。のどだけでなく、肺の筋肉まで鍛えることで、誤嚥しても外に異物を吐き出す力をつけるのです。

いずれのトレーニングもとても簡単なのに、効果は抜群。特に呼吸が浅い人は、飲み込んだ後に息を吸ってしまい誤嚥の危険性が高いので、呼吸筋群トレーニングを習慣にしましょう。

そのほかに私がおすすめしているのは、カラオケです。気管の入り口は声帯になっており、声を出すのと嚥下は同じ器官が使われています。大きな声を出すとのど周辺の筋肉が鍛えられますし、歌うことで呼吸機能もよくなるため一石二鳥です。思いきり歌えばスッキリしてストレス解消にもなるでしょう。

これらのトレーニングを続ければ、80代、90代になってものどを鍛えることができます。ぜひ今日から始めて、いつまでも美味しい食事を楽しみましょう。