具体的なのどのケアを説明する前に、まずは嚥下を司るのどがどんな構造になっているか、お話ししておきましょう。

のどには食べ物や飲み物を胃に送る食道と、空気を肺に送る気管の2つの入り口があります。呼吸をしているときは気管が開いた状態で、食事をすると気管が閉じる。専門的に言うと、食べ物がのどを通る際に、「喉頭がして気管をふさぐ」仕組みになっているのです。この喉頭の動きをコントロールしているのが、のど周辺の筋肉「喉頭挙上筋群(通称、のど筋)」。

健康な状態の喉頭は実に精密で、「食べ物が入ってきたよ」と脳から指令が送られてくると、0.5~0.8秒という短い時間で反射的に気管の入り口をふさぎます。しかし年齢を重ねると、筋肉の反射が鈍くなり、のど筋が動くまでに時間がかかってしまう。

【のど仏の位置を確認】
のど仏は首の真ん中あたりにある尖った軟骨。筋肉の衰えとともに位置が下がってしまいます。指を当てて真ん中より下にあるようなら、老化のサインです

ここで、みなさんののど筋が正常な状態か確認してみましょう。まず、のど仏の位置をチェックしてください。触れてみて首の真ん中より上にあれば正常。位置が下のほうなら筋肉が衰えて、のど仏が下がっている可能性があります。

次に、水や唾液をゴクリと飲み込んでみて、のど仏が上に動くか指で触ってみてください。しっかり上がらないようなら、老化のサインです。そのほかにも、のどの状態を確認できるチェックリストを前のページに示したので確認してみましょう。

喉頭の働きが正常でないと、気管に入った異物をせき込むことで外に出せなかったり、寝ている間に唾液や胃液が気管に入ってしまったりすることも。それが誤嚥性肺炎を誘発することになりかねません。そもそも神経系が衰えると、気管に異物が入っても気づかず、慢性的な炎症を起こしている場合も少なくないのです。

すでに老化のサインが出ている人は心配になったことでしょう。けれど、安心してください。のどは全身の筋肉と同じで、何歳になっても鍛えることができます。ここからは、食事でムセないためのポイントと、のどの筋肉を鍛える「のど筋トレ」をご紹介しましょう。

【嚥下力を確認】
100mLの水を10秒以内で飲み干せたらOK。10秒以上かかる場合は嚥下障害の可能性あり(30mLを5秒で飲み干すのでも可)。ただし普段から水を飲んでムセるなど、嚥下機能が悪い人はこのテストは禁止です