「孤独や死は誰もが感じるものだと思えば怖くない。孤独を感じるのは、生きている証拠だと思います」(撮影:洞澤佐智子/写真は自宅アトリエにて)
85歳のいまも個展や作品制作で多忙な日々を送っている、田村セツコさん。幸せも寂しさも大切なものとして受け入れる、〈セツコ流〉の人生哲学とは(構成:山田真理 撮影:洞澤佐智子)

夜明け前、寂しさに向き合って

年齢を重ねるにつれて、家族や友達、尊敬する人たちがこの世を去ることが増えてきました。別れの寂しさが頭をよぎるのは、だいたい午前3時半頃。街が眠っている時間にぱっと目が覚めて、ああ、いま私は1人なんだ……。本当の孤独感、ロンリネスがやってくるときがあります。

でも、本棚に目をやると、『赤毛のアン』のモンゴメリーやフランソワーズ・サガン、ジョルジュ・サンドなどの自伝が並んでいて。

彼女たちは孤独をなんとか手なずけようと悪戦苦闘したのを私は知っている。孤独や死は誰もが感じるものだと思えば怖くない。孤独を感じるのは、生きている証拠だと思います。

夜明け前の寂寥感を受けとめつつ、私のそばにはいつも〈親友〉がいます。それは、素敵なことや覚えておきたいことなど何でも書きとめる手帳。

子どもの頃からノートの切れ端にささっと絵を描いたり詩を書いたりするのが習慣で。手帳は私の宝物であり長年の友人で、これさえあれば1人でも楽しいんです。