原宿の自宅アトリエには、愛する本や写真、画材などがたくさん

私は高校を卒業して一度は銀行にお勤めしたけれど、どうしても絵の仕事がしたくて翌年に退社し、フリーのイラストレーターになりました。勤めを辞めることに両親は心配顔。銀行にいれば収入は安定しているし、縁談にも困りませんものね。(笑)

私は2人の前に正座して「絶対に後悔はしません。グチは言いません。経済的な負担はかけません」って3つの誓いを立てて、やっと許してもらいました。

駆け出しの頃はうまくいかなくて、母に電車賃を借りて出版社を営業で回りました。仕事がもらえず、とぼとぼと神保町のあたりを歩いて、古本屋さんで海外のファッション誌をあさったり名画座で古いフランス映画を観たり。

そこで目にした女優さんのファッションを真似て、頼まれてもいないイラストを家でコツコツ描いていたものです。

そうした時期の苦労が身に染みているから、基本的に仕事は「NOと言えない日本人」(笑)。雑誌の隅っこに小さなカットを1つ頼まれたら、10個描いて、「そちらで選んでください」って。

そうするうちに、雑誌の連載や、口絵で最新ファッションを紹介する仕事がもらえるようになって。もう嬉しくて楽しくて、寝なくても食べなくてもいいわってくらい仕事に没頭しました。