長年通っている神宮前のカフェ「シーモアグラス」はアートなくつろぎ空間

結婚にも憧れていたんですよ。明るい家庭を築き、いいお母さんになりたいなって。でも絵を描く仕事は昔からの憧れだったし、周囲のタフな女性のように両立するのは無理だと思って。

だって、この年になっても、締め切り前になると「わあ、間に合わない間に合わない」って〈同時多発的〉にいろんな作品に手をつけて、てんてこまいになっている私です。

あっちの油絵に色を塗ったら、こっちのオブジェに毛糸を貼りつけてって、まるで鯛焼き屋さんが次々と生地を焼いてはあんこを放り込んでるみたいな状態なのよ。(笑)

きっと結婚しても、家族にガマンをさせたり迷惑をかけたりしていたと思う。だから、結婚より仕事を選んだことに「悔いはない」って言うとなんだか偉そうだから、「まあまあ満足している」ってところでしょうか。

結婚しなかった理由は、私が育ったのが、両親ときょうだいで6人の〈絵に描いたような楽しい家庭〉だったことも理由の1つ。いい関係をフルコースで満喫してお腹いっぱい。「同じことはしなくていいかな」と思ってしまった。

逆に、〈貧乏絵描きの孤独な暮らし〉っていうのに憧れて、実現しちゃったわけなの。(笑)

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