AIの民主化

それまで、「AIの民主化」という言葉は意図的に歪(いびつ)に使われていました。ある会社が「これはAIの民主化だ」と主張するとき、それはたいていの場合、自社製品を使うことが前提だったのです。

それは民主化とは呼べません。誰かが完全にコントロールしているのでは、民主化というよりも帝国主義です。AIを使うハードルを下げることが大切なのは誰でもわかっていました。しかしそれを達成する最良の方法は、無料で手に入り、誰でも新しい商売を始められることです。その意味で、Stable Diffusionの登場までは、誰もそれを「民主化」とは認識していなかったと思います。

『教養としての生成AI』(著:清水亮/幻冬舎)

そして、画像生成AIのブームによって始まった生成系AIの民主化も、2022年末頃には全く別方向から話題になります。人工知能チャットボット、ChatGPTの登場です。

ChatGPTは誰でも無料で使える、多くの人々にとっては初めて触れる生成系AIであり、大規模言語モデルでした。

その振る舞いに多くの人々は驚きました。ChatGPTの受け答えが、まるで本当に知性があるかのように思えたからです。

あとで詳しく説明しますが、ChatGPTで知られるようになった大規模言語モデルの最新版が、本記事の執筆に用いているGPT-4というものです。