熟年離婚した本当の理由
離婚した当初はちょうど私がヨガにハマっていた時期で、「ヨガ離婚」などと騒がれたりもしました。確かにルーティーンが増えていってはいましたが、離婚する前からほぼひとり暮らしですから、そこはあまり関係ないかと思います。
そもそも、この時期に何かがあって、別れたわけではありません。ずっと何年も別居状態を続ける中で、妻と何かを共にすることもなく、生き方の方向性は確実に違ってきていました。
これまで一つの道を進んでいたふたりが、時間の経過と共に別々の道を歩み出し、距離が広がっていったような感じでしょうか。お互いのペースがありますから、そこを埋めようと、今から一緒に暮らすのも難しい。
ふたりで歩んできた人生の旅はもう終わり、と感じていました。何も離婚しなくても別居状態でいいのでは、と思う人もいるでしょう。でも、私はけじめをつけたかった。
還暦を控えて死へのゴールが近づくと、自分に正直に生きたいという気持ちが湧き上がってきました。それなのに人生の中で「本当じゃないこと」があるのはイヤだったんです。
決意を固めてから、妻に伝える前に、最初に3人の息子たちに告げました。彼らには子供の頃からなんでもオープンに話してきましたから、きちんと自分の気持ちを伝えたかったのです。
「離婚しようと思ってるんだ……。俺の60歳からの生き方があるし、ママにはママの生き方がある。だから、夫婦生活を卒業という形でね。ママの生活のことは今までと変わりなくちゃんと見るし、義理の両親のこともちゃんとやるから、今までと何も変わらない。ただ、書類上のことだけ。それでどうだ?」
「ああ、わかった」「親父の気持ちもわかるよ」「いいんじゃないの」と彼らはすんなり納得してくれました。
元々、両親が離れて暮らしているのを見ていましたし、3人とも自立し、それぞれ家庭も持っていましたから、それほど大きな衝撃はなかったのでしょう。「君たちの了解を得たから、ママに話してくる」私はその足で妻を訪ねました。
「さっき子供たちに話したけど、俺も若い頃と生き方が変わってきて還暦を迎えた。君にも君のこれからの生き方があるだろう。君のお母さん、お父さんのことは今まで通りちゃんとしていくので、お互い新たな道を歩むということでどうでしょうか」
「鶴さんがそういう思いだったら……」
妻は、私の勝手な言い分を受け止めてくれました。そして妻から「書類は、長男に渡しておくから、サインしてください」と言われ、35年間の結婚生活は終わったんです。
今も後悔はなく、子供たちとも相変わらず仲が良いです。元妻には「食事会とかあったらいつでも誘ってね」と言ってあります。お声はかかったことがないのですが……。