寒い現場にあたたかいお味噌汁

窪田 賢二は湿度のある役柄でしたが、僕自身は現場をすごく楽しんでいました。撮影した家のカラクリも面白かったですし、演出のトリックですごいメッセージが裏に隠されていたり。説明を聞いていて、なるほどと思うことがたくさんありました。「監督って使っている脳の場所が違うんだなあ」と、しみじみ感じましたね。

齊藤 いやいや。(笑)

窪田 あと撮影を真冬の仙台でやっていた際に、現場で工さんがあたたかいお味噌汁をふるまってくださって。腸を元気にすることで体を元気にすると。いわゆる「腸活」ですよね。齊藤監督、さすがだなと思いました。本当に、あったかい現場づくりをありがとうございました。

齊藤 健康については、窪田さんや窪塚(洋介)さんのほうがエキスパートですからね。撮影中、いろいろ情報交換させてもらいました(笑)。やっぱり食べるもの含め、我慢を前提に現場を作ってしまうと、まずスタッフさんたちが摩耗していくんですよね。僕はフランスとシンガポールと韓国で経験したんですけど、向こうでは現場に入っている間、摩耗どころか、皆がどんどんヘルシーになっていくんですよ。

窪田 へえー!!

齊藤 労働時間をはじめ、いろいろなことが軽やかになっていく。なので今回は、僕なりに不健康ではない現場を目指したつもりです。そもそも食材にしても、日本は発酵食品を筆頭に、体にいいものの宝庫じゃないですか。もちろん今の現場の食事が悪いというわけではないですが、何かを我慢したり無理強いすることで成立している状況にはしたくないと思ったんです。

窪田 わかります。

齊藤 “リスペクト・トレーニング”(※)などもそうですけど、特にコロナ禍で世の中が変わるべきタイミングだったこともあって、極力そうしたいなという気持ちがありました。

窪田 本当に、のびのびやらせていただきました。

※リスペクト・トレーニング/職場でのハラスメント防止のため、Netflixが開発したワークショップ型のトレーニング。役者はもちろん、監督やプロデューサー、撮影クルーに至るまで、作品制作に関わるすべての人がリスペクトの思いを共通認識として持つことを目的としている。