映画『バカ塗りの娘』で津軽塗職人を演じる小林薫さん(撮影◎本社・奥西義和)
映画『バカ塗りの娘』がこの秋公開されます。「バカ塗り」とは、塗って研ぐ工程をひたすらに繰り返す津軽塗を指す言葉。小林薫さんと堀田真由さん演じる津軽塗職人の父娘の姿を通じて、伝統工芸を続ける難しさ、親から子へと受け継がれるものの尊さが描かれています。小林さんは、寡黙で不器用な父・清史郎を演じ、その姿は『深夜食堂』のどこか色気のある飯屋の主人役とは一変した、愚直な職人そのもの。小林さんに、全編弘前で行われた撮影の苦労話や役作りの裏側について伺いました。
(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社・奥西義和)

役作りの方法

清史郎について理解しようとか、入り込もうとあまり思わなかったですね。むしろ逆で、どこか突き放して演じたところがあります。というのも、人は他人のことをとかく「こういう人だ」なんて評しますけど、それは一部に過ぎなくて、全体像なんかわからない。

この“お父さん”本人ですら自分で自分のことわかっていないところがあると思ったので、むしろ突き詰めないことを心がけたんです。彼は自分の言葉で思いを語ったりすることが不得手な人だと感じます。

だから、台本を読んだ後、監督と相談して台詞を減らしてもらうことから始めました。ボソボソと本当に僅かに語ることしかできない、そんな人だからこそ伝わるものがあるのかなと。