高校時代にその病院でアルバイトをする機会があったのですが、そこでもいろいろなことを見聞きしました。
たとえば脳腫瘍になった2歳の子どもがいました。手を尽くせば、短い間なら延命できる。だから放射線治療の回数を増やそうという先生がいた。一方、脳のその部分に照射すると目や耳に影響が出て、お母さんのことがわからなくなる危険性があるので反対だという先生もいた。会議の結果、放射線を当てることになりましたが、その子は目が見えなくなり聴力も衰えて、お母さんはパニックに陥ってしまった。
そうしたことを通し、命は誰のためにあるんだろうと、再び考えるようになりました。
「一人ぼっちになるのが怖い」
私は亡くなった前夫とともに「癒しの森」という漢方薬局を営んでいました。整体の施術もしていましたが、「癒しの森」を訪れる患者さんの中には、西洋医学ではもう治療法がないという末期がんの方が何人もいらっしゃいました。私は受付の担当でしたが、漢方薬は処方に少し時間がかかります。お待ちいただいている間に、患者さんからいろいろお話を聞くようになったのが、カウンセリングの始まりでした。
末期がんの方に「何が一番怖いですか」とお聞きすると、「一人ぼっちになるのが怖い」と言う方がとても多いのですね。治療法が残されているうちは、周りの誰もが積極的にかかわってくれる。けれど、やれることが少なくなってくると、担当の先生はあまり顔を出さなくなるし、友人も足が遠のく。遠慮あってのことだろうけれど、見捨てられたようで孤独を感じる、と。
「それでは私は、あなたが治っても治らなくてもそばにいます」、家族がいない方には「私がお墓参りもしますが、どうですか?」と言うと、皆さん泣きながら、「それだけで気持ちが楽になった」とおっしゃるのです。そんな流れでカウンセリングを始め、そのかたわら、ご縁があった方にはボランティアの形でターミナルケアをさせていただくようになりました。