「できない」という、うしろめたさ
12年間、30人ほどの男性と一生懸命試してみてもまったく進展がなかった──ということは、残された道は、真衣さんが心底惚れる男性に出逢うことではないだろうか。
しかし、相思相愛になったら、どうしても肉体関係というものが、その先で待っている。愛する人が現れたとして、真衣さんはどうその時を迎えるつもりなのだろうか。
「できないってコンプレックスがあるので今は、積極的に彼氏を作らないようにしてるんです。でも、もし本当に好きな人に出逢えたら、最後までできるように、私、絶対頑張りたいです。これまで、これだけ人を替えてもうまくできなかったんだから『この人と結ばれたい!』と思える好きな人と出逢わない限り、もう難しいんじゃないかって思うようになってきたんです」
真衣さんは、小さくため息をついた。こんなに一生懸命やってもらって、そして真衣さん自身も真剣に前向きなのに、どうしてもできない。
「できる」「できない」は、たとえば人生が変わるくらい、本当に大切なものなのだろうか。できないのなら、「しない」という選択もあると私は思うのだが。
「変わると思います」
即答だった。肩にかかっている真衣さんのロングヘアがはらりと揺れた。
「もしできたら、男性に対して私、もっと積極的になれると思うんです。今は『できない』といううしろめたさもあるので、男性に対して積極的に関われないし、たとえ(いいな)と思ってもアプローチできないんです。でもできるようになったら、いい人も自分で探せるようになれるんじゃないかなって思っています」
目の前に人参(エサ)をぶら下げられていても、それを取りに行けないストレスは、私の想像をはるかに超えているかもしれない。