「好き」という感覚がわからない

真衣さんは、2年前から東京近郊のコールセンターで働き始めた。声がきれいで耳に心地よい話し方をする真衣さんにピッタリの仕事だ。

職場は女性が大半で個人作業なので、喋る仕事でも働いている人との交流はない。休憩時間もバラバラで、もともと飲み会もなかったところに、コロナ禍で余計に職場の人との交流がなくなってしまった。

『大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(著:家田荘子/祥伝社新書)

さらに、真衣さんはお酒が飲めないので、1人でも飲むところへ行く機会がなく、余計に男性から縁遠くなった。しかも引っ越しをし、郊外にあるシェアハウスで、家賃5万円、4畳半暮らしをしている。

真衣さんの休日について尋ねると、「ずっと寝てます。寝るか、ご飯の作り置きをするか、掃除とか家事をするか……。外へ遊びに出かけることはほとんどないですね」

はたして地味な答えが返ってきた。出逢いを求めて、週末に一生懸命婚活をしている人も多くいるのだが。

「私、人見知りなのもあって、初対面の人とうまく話せなくて……」

それでも真衣さんはずっと、接客の仕事をしてきた。ただ、コロナ禍によって行動制限などが発生し、対面してコミュニケーションを取ることが苦手な人が増えてしまった。真衣さんもその1人なのかもしれないと私は思い直した。

真衣さんが個人的に「試し」でつきあってもらった最後の男性は40代で、1年前に別れている。

「『好き』という感覚が未だにわからないから、『つきあった』というのではないのかも。『できないかもしれない』って最初に断ってはいても、相手は皆、『自分ならできる』と思っているんですよね。でも、やっぱりできない。最後まで本当にできないって私みたいな人は、あまりいないと思うから、相手に申し訳なくて……。」