薬を抜いたとたん興奮が始まり、夜は眠らなくなった。認知症の症状も悪化し、問題行動が次々に出てきました。そこで医師の判断で薬を再開したのですが、今度は副作用で一日中ボーッとし、ろれつも回らなくなりました。
薬の適切な量を見極め、きちんと治療するために、医師から入院を勧められたのが3ヵ月後。そしてその2ヵ月後にグループホームを退所し病院に移りました。
さて病院でどうなるかなと思いましたがほどなく落ち着き、特に強い薬を使った様子もないのですが、2、3日の間は、昼も夜もよく寝ていました。むくみも取れ、発話もはっきりしてきました。
かつて私は精神科病院について「手に負えない認知症高齢者の最後の引受先。強い抗精神病薬で薬漬けにして死なせる場所」という、メディアで垂れ流す偏見に満ちたイメージを鵜呑みにしていましたが、実際はまったく違うことを知りました。家族の目には理想的に映るグループホームより、はるかに安定するケースもあります。
もともとの性格と症状の出方によって、どこで過ごすのが幸せかは千差万別。薬は使わず人間らしく扱ってほしいというのは一般論ですが、実際に何が効果を上げるかはケースバイケースと言えるでしょう。
介護者にこそケアが必要
最後に、認知症介護を密室化させるのは何としても避けるべきと言っておきたい。介護者のうつやあらゆる病気を誘発し、虐待、殺人、心中などを誘発しかねません。
認知症の家族とつき合う介護者は、キレやすい親分に仕えている舎弟みたいなものです。虫の居所によって何が飛んでくるかわからず、タイミングと相手の気分を見計らい的確に対処しなければならない。一瞬たりとて気が抜けずアドレナリン出っぱなしの日々です。
私の乳がんは、たまたま母が老健に入所したおかげで発見でき、命拾いしましたが、まわりには、親の介護の最中、あるいは見送った直後に、後を追うように病気で亡くなった人が何人もいるのです。最低限、デイサービス、デイケア、ショートステイといった形で他者に委ね、完全に自分の意識を介護から切り離す時間を作ることが、介護する側にもされる側にも必要なことかと思います。
そういえば今年に入って、髪の毛が抜けなくなりました。ここ数年、髪を洗うたびにごそっと髪の毛が抜けていたので、「あぁ、私も歳なんだ」と思っていたのですが、そうではなかったのですね。