歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
9月号の書は「抒情」です

デジタルな世の中だからこそロマンを味わう

ここ数年、舞台や講演はコロナの影響でお休みしていますが、コロナ前まで毎年開催していた「美輪明宏ロマンティック音楽会」でリクエストが多いのが、抒情歌「朧月夜」です。夕暮れに染まる春の風景が目に浮かび、日本画を見ているよう。メロディも詞も美しく、日本が誇る名曲のひとつです。

「赤とんぼ」や竹久夢二作詞の「宵待草」なども、愛され続けている歌です。

三木露風の詞に本居長世が曲をつけた「白月」もよく歌います。「照る月の影みちて/雁がねのさおも見えずよ」で始まる詞は、秋の月夜の美しさを、まさに抒情的に描いています。

「抒情画」という言葉を作ったのは蕗谷虹児です。大正から昭和にかけて、少女雑誌に少女の絵を描き続け、乙女心を捉えてきました。ちなみに童謡「花嫁人形」は、蕗谷虹児の作詞です。一方、少年・少女雑誌で美しい絵を描いたのが高畠華宵。お二人とも以前は「挿絵画家」と呼ばれ美術界で低く見られがちでしたが、近年、そのすばらしさが改めて注目されています。