心を癒やし麗しく保つため

詩人の北原白秋には、『思ひ出 抒情小曲集』という詩集があります。福岡県の柳川で過ごした少年時代の思い出を詩にしたもので、冒頭の文章「わが生ひたち」を読むと、水郷の風景や白壁の家並みが映像のように浮かび上がってきます。

情景や感情をロマン豊かに表現する「抒情」は、日本のすばらしい文化のひとつ。最近、抒情的な童謡や唱歌が見直されているようです。アスファルトで埋め尽くされ、デジタルが溢れる時代だからこそ、心ある人は抒情を求めるのかもしれません。

嘆かわしいニュースや殺伐とした事件が多い昨今、心を癒やし麗しく保つために、たまには極上の抒情をぜひご賞味あそばせ。

●今月の書「抒情」