通行止め!

そんなことを考えていると、 あれ、ここで合ってるのかしらと思うほど崖っぷちの細い山道を走っていた。

対向車はしばらく見ていない。この崖から下に落ちたら大変とハッと息を吐いた。急カーブを曲がるたびに、よし!よし!と小さくかけ声をかけた。

父の母は、利賀の山道を運転中に崖に落ちて亡くなった。そこにはお地蔵さんが建てられている。 このあたりの山道の曲がり角には、所々にお地蔵さんがあり、昔は今より道路事情がよくなかったのであろう、亡くなられた方が沢山いたようだ。

わたしも気をつけねば。汗がじわりと出てきた。 気がつくと、だいぶ山の中にきたのか、木々と川、空と雲しか、みえなくなってきた。建物もないのだ。 ヴィッツと共に、2時間近く走ってきたが、そろそろレヴォに着いても良さそうなのだが。

本連載から生まれた青木さんの著書『母』

行き過ぎたのだろうか。 だけど、それらしき建物もなかった。 いや、だが、店は、かなりの山奥にあるという話だったし、もう少し行ってみようとヴィッツを走らせるが、もはや、本当に、自然以外は何もない!30分以上、車も人も見ていない! ヴィッツをとめて、スマホをみると圏外。ラジオも圏外。

いよいよドキドキしてきた。わたしは、大丈夫かな、とかヤバいですね、とか何かしらのひとりごとを言いながら、仕方なくさらに走ると、細い道が更に細くなり、草むらをかき分けて走ると、目の前に 通行止め! と手書きで書いた看板があらわれた。

道には、通れないように木が打ちつけてある。 やっぱり行き過ぎたんだ。 道を間違えた? 間違えるもなにも、一本道だったし! わたしは、無事に帰れるのだろうか。一瞬で安全だと言われる日本でも人は孤独で不安になれるのだ。