何かが猛スピードでやってきた
涙目になりながら、細い道でUターンし、今来た一本道を、はっはっと息をしながら引き返す。 誰かに、会いたい。 建物が、みたい。 そこへ坂の下から何かが猛スピードでやってきた。 自転車?まさか。こんなところで。
いや、確かに自転車だ! わたしは道の真ん中にヴィッツを止め窓から 「すみません!」と叫んだ。 自転車は止まり、その人は優しそうな男性だった。
「あれ?青木さん?何してるんですか、こんなところで」 それはこっちのセリフだよ。 「行き止まりでしょう、上は」
「そう、そうなんですよ。あの、レヴォというところに行きたくて」
「レヴォは、2.3キロ下ですよ。小さな看板がありますよ、そこを曲がる」
「ああ、そうでしたか、いやあ、ありがとうございます、助かりました本当」
「青木さんせっかくですから」
「はい」
「写真撮っていいですか?」
「じゃあ、わたしも撮っていいですか?」
わたし達は、何故か互いのスマホで写真を撮り、手を振って別れた。