(写真提供:photo AC)
遺された身体や荷物、財産の処分を自身で行うことはできません。家族に頼れない高齢者が安心して死を迎えるためには、どのような備えが必要なのでしょうか(構成=上田恵子 イラスト=おおの麻里)

「誰か」に決定をゆだねなければならない

よく、「私は誰にも迷惑をかけずに逝くから大丈夫」と言う方がいます。けれど、「誰も巻き込まずに死ぬのは不可能」です。私は長年、身元保証や任意後見など、高齢者が亡くなる前後のサポートをしてきました。その経験上断言できます。

人生の終盤をマップにしてみました(下図)。自立期(1)は、自分自身で意思決定ができる時期です。そこから、加齢により筋力や精神力が衰えていくフレイルの時期(2)を経て、人によっては、認知症や病気で判断力を喪失してしまうことも(3)。この時期に入ると自分自身で意思決定ができなくなるため、家族なり、第三者なり、「誰か」に決定をゆだねなければなりません。

 

●人生の終盤のマッピング

 

さらに問題なのは、亡くなった後(4)のこと。たとえ死の直前まで意識がはっきりしていたとしても、死後のことは自分自身で実行できません。遺された「身体」や「荷物・手続き」、「財産」の処理を信頼できる人に託さなければならないのです。

私は、(2)〜(4)の時期を総称して「エンディング期」と呼んでいます。この時期の高齢者が安心して人生の終わりを迎えられるように、高齢者と病院や高齢者施設、葬儀社といった機関をつなぐ役割。日本では原則として家族がそれを担っています。身元保証人となり、いざという時に駆けつけてくれることが前提となっているのです。

しかし今後ますます家族形態は多様化し、子どもがいない夫婦や、配偶者と離婚や死別をした人、生涯独身の人なども増えるでしょう。仮に子どもがいても、経済的に頼れない、折り合いが悪いなどの理由で、老後を託せないケースもあります。託せる家族がいないという問題は、誰もが直面しうるものになってきているのです。