(イラスト:おおの麻里)

では、死後を託す相手を決めずに世を去ってしまうとどうなるのでしょうか。まず問題になるのは「身体」です。病院で身元保証人がいないまま亡くなったり、自宅で孤独死したりした場合は「引き取り手のない遺体」となり、自治体が委託した葬儀社が搬送・安置することになります。

そして役所が法定相続人を探して、遺体の引き取り(葬儀の主宰や費用の負担を含む)を依頼。そこで引き受けてくれる相続人が見つかれば、家財処分(賃貸住宅であれば原状回復や解約手続きも)や遺産相続へと進むことができるでしょう。

しかし、法定相続人がいない場合は、家庭裁判所の相続財産清算人選任手続きに進みます。この場合、債務が清算されて財産が国庫に帰属するまで数年かかることも。

なお遺体は、火葬・埋葬を市区町村が行うことが法律で定められています。多くの自治体ではご遺骨を数年間保管してから、永代供養墓に合祀するのだそうです。

実は今、自治体はこれらの業務に振り回されています。現状なんとか回っているのは、医療や介護、葬儀の現場の人たちが見るに見かねて、職域を超えるリスクを冒しながら担っているからです。このような仕事は「シャドーワーク(陰の仕事)」と現場では呼ばれています。

しかし、超高齢社会の日本では、このままでは立ちゆかなくなるのは火を見るよりも明らか。見て見ぬふりをしてきた政府も、ようやく課題の解決に向けて動き出しています。

後編「エンディング期を支える3つの契約」につづく