(写真提供:photo AC)
遺された身体や荷物、財産の処分を自身で行うことはできません。家族に頼れない高齢者が安心して死を迎えるためには、どのような備えが必要なのでしょうか(構成=上田恵子 イラスト=おおの麻里)

前編「エンディング期に起こること」よりつづく

エンディング期を支える3つの契約

では、おひとりさまが周囲を混乱させることなく自分の意思を託すためには、どうすればいいのでしょうか。

私は、自立期の間に、「委任契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」という3つの契約を第三者と結ぶことを推奨しています。これらはそれぞれ独立した契約ですが、3つ揃うと「3本の矢」のように大きな力に。あとは財産について「遺言」を作成すれば、エンディング期の備えは万全だと言えるでしょう。

3つの契約は、可能ならば同一の個人、団体に依頼することが望ましい。もしバラバラにお願いする場合は、どう連携を取るかが課題になってきます。

まず「委任契約」ですが、これが使えるのは、自立期かフレイルの時期。契約した内容を自らの判断で都度依頼できます。内容は、老人ホームへの入居や病院に入院する際の身元保証、金融機関の手続きの支援、定期的な安否確認など。

「任意後見契約」は、認知症等で判断力をなくした時のために備える契約です。契約内容は「任意後見契約に関する法律」で定められており、自立期の間に公正証書で締結しなければなりません。

任命された人が家庭裁判所に、任意後見人に就任する旨を申し立てる必要があります。すると家裁が「任意後見監督人」を選任。任意後見人が財産を適正に管理できているか監督してくれるので安心です。

任意後見の内容は主に、財産の管理(不動産の管理・処分、金融機関との取引、各種費用の支払いなど)や、介護・生活面の手配(日常的な生活の管理や要介護認定の申請等に関する手続きなど)。死亡届の提出も依頼できます。

3つ目の「死後事務委任契約」は、亡くなった後のことを担ってもらう契約です。その内容は、遺産配分以外の事務全般。退院手続きと入院費の支払いに始まり、葬儀・火葬・納骨といった祭祀の主宰など多岐にわたります。(図)

自分自身の財産をどうしたいのかが決まっているなら、「遺言」を作成しておきましょう。その際、必ず「遺言執行者」を指定して、遺言の保管を依頼しておくこと。遺言執行者にはその遺言を実現するための権限が与えられているので、手続きがスムーズです。

なお、「死後事務委任契約」を結んだ人に、遺言執行者への死亡通知を依頼しておくと、いち早く手続きを進めることができます。

●自分では決してできない死後事務