「引き取り手のない遺体」になってしまったら

実際に私が見たおひとりさまの事例をご紹介しましょう。

【CASE1】

「私は葬儀社に生前予約をしているので安心よ」と言っていたAさん。生涯独り身を通し、きょうだいもいません。
突然脳梗塞で緊急搬送され、そのまま亡くなりました。果たして「誰」が入院費用を払い、Aさんの死を葬儀社に伝えるのでしょうか?

 

【CASE2】

夫婦で老人ホームに入居し、夫に先立たれたBさん。夫の姪に身元保証人をお願いしていましたが、夫の死後断られてしまいました。
次の保証人が決まる前に体調を崩し、そのまま死去。2週間以内に部屋を片付け、退去する必要があります。「誰」がBさんのモノの処分をするのでしょうか?

 

【CASE3】

賃貸マンションでひとり暮らしをしているCさん。夫と離婚した後、ひとり息子とは絶縁しています。ある日、孤独死しているのが友人によって発見されましたが、死後のことは準備していなかった様子。
Cさんの身体と荷物は「誰」が対処するのでしょうか?

 

3つの事例の「誰」は、担当のケアマネジャーや老人ホームのスタッフでしょうか?いえ、それはできません。原則として介護関係者は、「命に関すること」「お金に関すること」に立ち入るのは不可。それらはあくまでも家族の役割として、線引きされているのです。

病院の場合は入院契約が、老人ホームの場合は入居契約が、自宅の場合は介護の利用契約が、本人の死亡とともに終了してしまいます。