協会では、会員登録をした人のリビング・ウイルを事務局で保管し、本人には会の連絡先を記したカードを持ち歩いてもらっています。近年はひとり暮らしの高齢者も増えていますし、近くに頼れる家族や知人のいない人なら、万一の場合に自分の望む医療を受けるため、このカードは非常に有効でしょう。

これは終末期、つまりほぼ助からない時の指示書なので、治る見込みのある時には適用されません。事故や怪我で救急車を呼ばれて、意識がないからといって治療しないということにはもちろんならない。将来的に期待するのは、市町村など公的機関が指示書を保管して、医療機関から照会があれば閲覧できるようなシステムです。

人生の最期に受ける医療を、私たち一人ひとりの事情・希望に応じて選ぶ権利は、「基本的人権」の1つだと思います。近年では極端な延命治療は避けられる傾向にあり、胃ろうを設置する件数も減少している。

ただし、一度始めた延命治療を途中で「やはりやめたい」と求めても、受け入れてもらえないケースはまだまだ多いのです。医師は人の命を助けることが使命なので、途中で治療をやめることに抵抗があるもの。

また、医師の判断で治療をやめた場合、病院が罪に問われることが懸念されるという事情もあります。現在協会では、自分の最期は自分で決めるという考えが法律でも保障されるよう、法制度の整備を国に求めているところです。

誰もがいつか迎える「死」。だからこそ、先送りにしないでその日について考えることで、不安なく毎日を過ごせるようになればと願っています。