「さんざん健康を売りにしてきた私が、がんになったとき、ここで黙っちゃいかんだろ、と(笑)。私の生き方に反すると思ったんです」(撮影:宮崎貢司)
いつも朗らかで健康的な秋野暢子さんが、2022年6月、食道がんと診断された。闘病の様子をブログで発信、前向きな姿が共感を呼んでいる(構成=平林理恵 撮影=宮崎貢司)

<前編よりつづく

「迎え撃つぞ」決意表明のはずが

手術をしない治療を選んだことで、私の担当医は外科から内科へ。その後、内科と放射線科の担当医とお話をして、『食道癌診療ガイドライン』にある標準治療をやってみましょうということになったのです。

放射線は、週5日、6週間かけて30回照射、抗がん剤は24時間の点滴を月曜から金曜まで5日間入れて3~4週間休む、これを4クール。治療は7月の半ばに始まり、約4ヵ月半で終了しました。

この頃から私は食道がんについての勉強を始めました。集めた情報からわかったのは、ステージIIIの食道がんはなかなか手強いということ。そして手術ができる状態であるならば、手術が第一選択であるということ。でも、不思議なことに不安はありませんでした。

抗がん剤は副作用が強く出て、吐き気との闘いになる、と聞いたことがあったのですが、医療の進歩はすごい! 今はよく効く吐き気止めのお薬があって、それを抗がん剤と同時に点滴で入れるんです。おかげで、抗がん剤の治療中、気持ちが悪くなることは1度もなかったですね。

抗がん剤についてはもう1つ、笑える誤算がありました。代表的な副作用に「脱毛」があります。目覚めたら枕に髪の毛がたくさんついていたり、ブラシでとかすとごそっと抜けたりするらしい。それなら先に剃ってしまえばいいんじゃない? そう思って、治療開始後すぐ、すっきりスキンヘッドにしたのです。

ところが、病室に入ってきた先生が「どーしたの? その髪の毛」と、目を丸くするじゃないですか。「あなたの抗がん剤、あんまり抜けないよ」って。結局、その後私の髪はまったく抜けず。私としては副作用を「迎え撃つぞ」という決意の表明だったんですけど、ただの早とちりでした。(笑)