一方、その治療の結果、どのような状態にあるか。たとえば、苦しいとかつらいとか伝えることができるのは患者だけ。だから、医師の前で「大丈夫です」と虚勢を張らないほうがいい。コミュニケーションが大事です。

治療によって何が自分の体に起こるのかがわからなければ、何度でも医師に聞きましょう。自分が納得できるよう、後悔しないよう、あくまでも主導権は自分が握っておく。「主治医は自分」という意識でいたらいいのではないかと思います。

私が先々を憂えることなく病気に向き合えたのは、もしかするともともと持っていた死生観によるものかもしれません。

私は、母を見送った経験から、いつ死んでもいいようにと、終活準備を整えています。60歳のときに日本尊厳死協会に入会して、終末期医療についての希望をリビング・ウイルとして残すことにしました。さらに、必要なことはエンディングノートに書き残し、それを毎年年末に更新しています。

それもあって、死ぬこと自体をあまり恐れていないのです。いずれ人は死ぬのですから。ただ、今回のがんは、なぜか「私が死ぬのはこのタイミングではない」という謎の確信があったのだけど。(笑)

やりたいことがたくさんあるのが、私の原動力。仕事も挑戦し足りないし、一時中断していた東北支援も再開する予定です。プライベートでは娘が結婚するので、家族が増えるのも嬉しい。まだまだ人生を楽しまないと。そう考えられるのは、生きているおかげだと思っています。

【関連記事】
秋野暢子、65歳でステージIIIの食道がんに。今まで通り生きたくて、生存率30%でも手術より放射線治療を選んだ
堀ちえみ「もっと早く舌がんを発見できていれば」夫が実は怒ってくれていたと知り、自分の怒りが救われた。運命だったと気持ちを《片付け》て
鎌田實 食道がん末期で死の準備を始めた72歳・ユキオさんがメロンを前に「最高の笑顔」を見せた理由とは?「楽観力」こそ幸せになるための「ジョーカー」である