停留所名の楽しみ

たまたま私が住む日野市を通ることから、現在と比べるとなかなか興味深かった。たとえば日野駅の隣に見える「日野産業」というバス停。今は京王バスの「日野自動車前」だが、旧称の日野産業とは昭和21年からの社名である。

『地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(著:今尾恵介/中央公論新社)

2年後の同23年には日野ヂーゼル工業と改称しているのに、停留所名はなぜかそのまま。図の時代はちょうどルノーの名車「4CV」のライセンス生産が行われていた頃で、「コンテッサ」はまだ発売されていない。

その先の「六桜社前」はその後、社名変更や業界再編を受けて何度も改称の末、今では京王バスの「コニカミノルタ前」となっている。

もともとバス停名には、会社や学校、工場などの建物や施設の名称からとったものが多い。

誰もが知っている目印としての機能があれば、地名よりわかりやすいため多用されたのだろうが、当然ながら由来となった施設の名前が変われば停留所名も変更せざるを得ない。

このため特に昔のバス路線図には、旧社名やかつての懐かしい施設名などが記録されており、時代が経てば地形図とはひと味違う貴重なアーカイブにもなる。