地下鉄路線の増加に際して減少したバス路線

都心部も今とはだいぶ様子が違う。地下鉄路線の増加に反比例してバス路線とその停留所は減少したが、特に永田町や霞が関などの地下鉄密集地に今はあまりバス停が見当たらない。当時このあたりを走っていた62系統をたどろう。

ちなみにこの路線図は手書きなので、当時の流儀でカタカナや略字、略記も目立つ。銀座一丁目は「銀一」、麻布の箪(正しくは旧字)笥町は「タンス町」、数寄屋橋は「スキヤ」といった具合である。

この系統の停留所を霞ヶ関から順に挙げれば恩給局、ギ事堂(国会議事堂)、参ギ院、首相官邸、特許局、溜池、山王下、国会図書館、四谷見附……と続く。

現在このルートを通る路線バスはなく、恩給局はすでに存在しないし特許局は特許庁となった(昭和24年に改称済み)。

当時の国会図書館は赤坂離宮(現・迎賓館)に仮庁舎が置かれ、利用者は豪華なシャンデリアの下で閲覧していた。バス路線図は、変貌する東京の姿を映し続けている。

 

※本稿は、『地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(著:今尾恵介/中央公論新社)

「東が上」の京都市街地図/鳥瞰図絵師・吉田初三郎/アイヌ語地名の宝庫/職人技のトーマス・クック時刻表/非常事態の地図……著者は小学校の先生が授業に持参してきてくれた国土地理院の一枚の地形図に魅せられて以降、半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた。その“お宝”から約100図版を厳選。ある時は超絶技巧に感嘆し、またある時はコレクターの熱意に共感する。身近な学校「地図帳」やグーグルマップを深読みするなど、「等高線が読めない」入門者も知って楽しい、めくるめく世界。