(構成=編集部 撮影=本社写真部)
卵焼きを毎朝巻いていた中高生の頃
連載中の「赤羽せんべろ まねき猫」は、「まねき猫」という名の立ち飲み屋さんが舞台なんです。先日、第5回の原稿を担当編集さんに送ったら、作中に出てくるまかないのモツ煮込み丼のことを、「飯テロです」と誉められました。(笑)
飲食店が舞台の作品を書くようになったきっかけは、時代小説の「居酒屋ぜんや」シリーズ(ハルキ文庫)です。出てくる食べ物がおいしそう、と言っていただくことが多くてありがたいんですが、実は、食べ物の描写にそれほど力を入れてるわけではありません。(苦笑)
先日友だちの新川帆立ちゃん(ミステリー作家。『元彼の遺言状』『競争の番人』など)と対談をしたんですけどね。彼女の『先祖探偵』(角川春樹事務所)では食のシーンが多いから、「食べる場面に主人公の生命力を感じるね」って言ったら、「私は食べる人目線の描写ですけど、坂井さんは作る人目線ですよね」と返されて。なるほど、そうなのかな、と。私は、おいしいものを想像したり食べたりするのはもちろんですけど、作るのも好きなので。
家ではほぼ自炊です。高校に入ってすぐ、専業主婦だった母が亡くなりまして。同居していた父方の祖母が、信じられないほどの料理下手(苦笑)。放っておくと、スーパーの惣菜コーナーの焼き鳥とか鰻の蒲焼、祖母が揚げたべちゃべちゃの天ぷらが夕食のローテーションに……。それがあまりにも苦痛で、ある日、このままでは自分の舌が馬鹿になってしまう! と思ったんです。
その結果、学校帰りに制服のままスーパーに寄って買い物をして、家族の夕食を作るようになりました。本格的に料理を始めたきっかけですね。母が病床にあった中学時代から、学校のお弁当は自分で作ってたんですよ。中高生の頃は、毎朝、卵焼きをやたらと巻いてました。(笑)