では達人介護職員はどうやって、認知症の人の心を穏やかにしているのか? そこにはどんなテクニックが?

……実は、特別なことをしているようには見えませんでした。ただ、達人と認知症の人の関係性に注目してみると、どの達人も共通して「いい人」と思われていることがわかりました。

「いい人」とは、自分を否定せず、安心感を与えてくれる人。「この人はいい人だ」という印象を普段から持ってもらうことで、その職員が目の前に来ただけで、気持ちがすーっとほぐれて、穏やかになるのです。

 

ではどうしたら、認知症の人にとって「いい人」になれるのか。私が観察した結果、達人は下記のような「しない」ことがあるのに気づきました。

・本人に欠点を指摘しない

・否定的な態度をとらない

・求められていないのに助言やアドバイスをしない

・本人の前で悲観的な態度をとらない(もうだめ、無理など)

・議論して相手を言い負かそうとしない

・手柄を主張しない(それは私がしてあげたということを言わない)

・相手を見下ろして話さない(目線を合わせて話しかける)

これらの逆、つまり「本人に欠点を指摘する」「否定的な態度をとる」といったことをしてしまうと、認知症の人に「いやな人」という印象を与えることになります。

 

『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』(著:藤原るか・坂本孝輔/すばる舎)