「他人に迷惑をかけるな」という教育の呪縛

「さみしいけれど、それは自分の勝手な感情なのだから、誰かを巻き込んで迷惑をかけてはいけない」「他人の時間を、自分の気持ちの処理のために使わせるのはいいことではない」などと、つい遠慮してしまうのではないでしょうか。

なぜそう思ってしまうのかを解明するうえで、日本の家庭教育もその一因として考慮する必要があります。

『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』(著:中野信子/アスコム)

日本における保護者の多くは、子どもに対し、他人に抜きん出て能力を高めることよりも、組織や共同体から外れない人になることを望んでいるということを示唆する統計があります。「他人に迷惑をかけない人になってほしいと願う親が、他国と比べてとても多いのです。

周囲への配慮を欠かさないことは、長いあいだ日本人としての美徳とされてきました。

そのため、多くの日本人は、個よりも社会を優先するマインドセットを有するように育てられてきているといえます。

しかし、海外の子育てでは、「人に騙されてはいけない」「困っている人がいたら助けよう」「自分の得意なことでトップを目指せ」など、各国の文化を反映した声かけが強調されます。

子どもに対しても、「子どもは他人に迷惑をかけながら育つもの」という、そもそもの認識があるためか、誰かが自分勝手な行動を取ったり、あるいは互いに頼ったり頼られたりすることに対して寛容なことが多いようです。