ひとりで耐えもがくことだけが唯一の手段ではない

「さみしさにひとりで耐えることが美徳」と考えるのは、わたしは違うと思います。

さみしさは非常に強い感情であり、長時間抱え込んでいると、心身に様々な悪影響を及ぼすこともあります。

そして本当に心が弱ってしまうと、悪意を持った人が寄ってきやすくなり、騙されやすくなるという弊害もあります。

さみしさで心が完全に弱まってしまう前に、日頃から、頼ったり頼られたりしながら、「お互い様」と言い合える人間関係を少しずつ築いたり、ぶらりと立ち寄り気兼ねなくいろいろな話ができるような行きつけの店を探してみる、そんな工夫も必要なのかもしれません。

「迷惑をかけるな」という教えに縛られて、さみしさを解消する術を持たず、ひとりで耐えもがくことだけが、唯一の手段ではないと気づくべきなのです。

※本稿は、『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』(アスコム)の一部を再編集したものです。

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人は、なぜさみしさに苦しむのか?』(著:中野信子/アスコム)

さみしさは心の弱さではない。
生き延びるための本能-。
人類は、なぜ「さみしい」という感情を持つのか?
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