中野先生「論破より、言葉をうまく使って相手を懐柔できることのほうがずっと重要」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
現代のインターネット社会では、「本音を言うのが正義」、「論破するのが最上」といった雰囲気が形成されてきましたが、場合によっては相手との関係性が壊れてしまいますよね。脳科学者の中野信子先生は、言いたいことを言うけれども、相手を直接傷つけたり、関係性を破壊してしまったりしないコミュニケーション方法を提案しています。その中野先生「論破よりも、言葉をうまく使って相手を懐柔できることのほうがずっと重要」と言いますが――。

脳は調和よりも論破を好むようにできている

相手と良好な関係を長続きさせるよりも、論破したり、打ち負かしたりすることに喜びを感じがちな人間の脳の性質をどう制御するかは大きな課題です。

人間の性質というよりは、ある程度の社会性を持つ生物全般の性質といえます。

この性質は言い換えれば、ヒエラルキーのある構造を持った集団をつくる生物の性質かもしれません。

たとえば犬はその代表格になるでしょうし、集団の中につつき順位があるニワトリもそうです。もちろん霊長類もそうです。

そういった構造を持つ集団の中にあって、ボスになりたい、ほかの個体よりも上の位置に立ちたいという欲求が生じるのは、生き物にとっては自然なことでしょう。

ヒエラルキーで上位にあるほうがいい扱いを受け、取り分も多くなり、より遺伝子を多く残せる確率が高くなるからです。

多くの個体がそっちを目指すというのは分からない話ではないでしょう。