「論破したい」欲求は男性ホルモンが関係していた!?

複雑な社会性(集団同士のぶつかり合いや、集団内部に生じる局所構造としての小集団)を考慮せずに済むのなら、これを目指さないことのほうがむしろ不自然かもしれません。

ただ、この欲求の強さは、男性ホルモンが介在することでより強くなるのではないかということがいわれています。

『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(著:中野信子/日経BP)

女性でも男性ホルモンは分泌されていることが分かっていますが、その濃度の高い個体のほうが、上昇志向的な欲求が強いという傾向があるようです。

男性と女性で性差があるのは、生殖に関わる構造の非対称によるものと考えられ、女性は女性同士の協力の重要度がより高いために、上昇志向があまり高すぎないほうがより生存適応的であるからだろうと考えられます。

このことからも示唆されることではありますが、相手にその場限り勝つという戦略が必ずしも得にならないというのは、人類では頻繁に起こるようになりました。

集団のサイズが大きくなったために、集団内部に生じる局所構造としての小集団という下位構造や、それらのぶつかり合い、また他集団との行き来を考慮しなければならなくなったからです。