現世の決着は現世で

彼女は今、どんな気持ちで過ごしているだろう。

「そりゃあ、落ち着かないでしょうね」

それにしても、本当に訴えるつもりですか。

「余命のことがありますから、たとえ訴えたとしても時間切れになるでしょうね。ただ、少なくともあの時私が苦しんだのと同じくらいの時間を、彼女にも味わわせてやるつもりです」

そして、郁代さんはまっすぐな目を向けた。

「私ね、命が限られたと知ったら、人はきっと悟れるに違いないと思っていたんですよ。すべてに感謝し、すべてを赦し、誰も恨まず憎まず、仏のような気持ちになってあの世に旅立てるんじゃないかって。ましてやこの歳ですし。でも、実際はそうじゃなかったですね。本音を言うと、今、とても爽快な気分なんです。もしかしたら訴訟可能な3年くらい生きられるんじゃないかって思えるほど」

実際、とてもエネルギッシュに見える。

「もし、彼女のことを胸の中にしまったままあの世に行ってしまったら、ちゃんと成仏できなかったんじゃないかしら。彼女の枕元に化けて出るかもしれません。現世の決着は、やっぱり現世で付けておかなくちゃね」

そう言って郁代さんは快活に笑った。