撮影:本社写真部
45歳の時、若年性アルツハイマー病と診断された藤田和子さん。12年経った今も主婦として家事をこなし、また当事者として認知症について積極的に発信しています。藤田さんにとって、“認知症とともに生きる”とは──(構成=福永妙子 撮影=本社写真部)

「おかしいな」が確信に変わった日

自分の病気に気づいたきっかけは、生活のなかで、「あれ? おかしいな」と思うことが頻繁に起きるようになったからです。「お母さん、同じことを何度も言うよね」という娘からの指摘。友だちとの約束の時間が「何時だったっけ?」とわからなくなる。出なくてはいけない会合があることを忘れる。眠れない……。

最初のうちは「大丈夫、誰にでもよくあること」と思っていました。けれどある日、朝食べたコーヒーゼリーのことをまったく覚えていなかった。さすがにその時は、「脳に何かが起こっている」と思わずにはいられませんでした。「病院に行ったほうがいいよね」「うん。お母さん、診てもらったほうがいい」。娘たちからも勧められ、受診を決めたのです。

若年性アルツハイマー病と診断された時はショックでしたし、この先どうなるのだろう、と将来への不安も溢れてつらかった。けれど同時に、日々の違和感や数々の症状の原因がわかり、「そうだったんだ」と納得する部分もあって。病気ならば仕方がない。治る病気ではないけれど、薬で進行を遅らせることはできるかもしれない。そんな思いとともに、病気を受け入れたのでした。

夫と3人の娘たちも不安だったと思いますが、私に対する態度が変わることはありませんでした。同じく認知症の義母を9年間介護した経験があったので、普通の家庭よりは理解があったのかもしれません。

私はもともと、主婦として家のことを任せてほしいタイプ。だから診断後も、「これまで通り、家事も身の回りのことも自分でやる」と思っていましたし、家族も私の性格をよくわかっているので、必要以上に手を差し伸べませんでしたね。