「思い込みのプレッシャー」
「たった1本の電話で、あなたの介護は変わります」
「介護でつらくなったときにまずやるべきことは『つらいです』『助けてほしい』と声を上げることです」
「まず考えることは、介護する側であるあなたがいかにラクに過ごせるかです」
これらは「介護で大切なことはなんですか?」と聞かれたときに、私が必ず伝えている言葉です。
「介護のつらさ、大変さが、本当にわかっていますか? そんなことでは変わらないですよ」
「介護は他人に頼るのではなく、家族がやるものでしょ?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていきます。
すべての介護を1人で行ってきた方が、介護の相談窓口となる「地域包括支援センター」に電話し「介護保険サービス」を活用したことで、心に余裕ができて笑顔が増えた―そういう話を、いくつも聞きました。
こんな方もいました。
「子どもにはなるべく迷惑をかけたくない」とおっしゃって旦那さんの介護を1人で頑張っていた奥さん。しかし、やがて限界を迎え、本人からしたら恥をしのんで(まったく恥なことではないのですが)「つらい」と助けを求め、週末1日だけ、お子さんに介護を代わってもらうことにしたそうです。
その1日を友人との食事や買い物、大好きな映画鑑賞など、自分のリフレッシュの時間にあてることにしたのです。
はじめは、休むことに罪悪感を覚えたり、旦那さんからは「自分だけ楽しんでいいなぁ」と嫌味を言われたりもしたそうです。
ですが、休みを挟むことで、日々の介護をおおらかな気持ちでできるようになり、旦那さんの小言もやさしく受け流せるようになり、関係性もよくなったそうです。
周囲に助けを求めるための1本の電話や相談といった「ちょっとした行動」には、高いハードルがあるのもよくわかります。
「家族の面倒は私が見なきゃ」という目に見えない使命感、「家族なのだから面倒を見るのは当たり前」と思われているのではないかという「思い込みのプレッシャー」によって、ついつい1人で介護を背負いこんでしまっている。
そういう方は、非常に多いように見受けられます。
なぜでしょう。
それは、これまでの長い介護の歴史からくる、ある種のしがらみのようなもののせいなのかもしれません。