坪田さん「1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていきます」(写真提供:Photo AC)
「地域包括支援センター」は、市町村が設置している機関で、地域の高齢者の相談や介護の予防支援などを行っています。厚生労働省の発表によると、2022年時点で全国5,404ヵ所(支所を除く)に設置されているそう。そのようななか「介護を助けてくれるものが、あなたの周りに実はたくさんあります」と語るのは、看護師、看護・介護ジャーナリストの坪田康佑さん。さらに坪田さんは、「1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていく」とも言っていて――。

「思い込みのプレッシャー」

「たった1本の電話で、あなたの介護は変わります」

「介護でつらくなったときにまずやるべきことは『つらいです』『助けてほしい』と声を上げることです」

「まず考えることは、介護する側であるあなたがいかにラクに過ごせるかです」

これらは「介護で大切なことはなんですか?」と聞かれたときに、私が必ず伝えている言葉です。

「介護のつらさ、大変さが、本当にわかっていますか? そんなことでは変わらないですよ」

「介護は他人に頼るのではなく、家族がやるものでしょ?」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、1本の電話やちょっとしたお願いをできるかできないかで、介護のしんどさは、大きく変わっていきます。

すべての介護を1人で行ってきた方が、介護の相談窓口となる「地域包括支援センター」に電話し「介護保険サービス」を活用したことで、心に余裕ができて笑顔が増えた―そういう話を、いくつも聞きました。

こんな方もいました。

「子どもにはなるべく迷惑をかけたくない」とおっしゃって旦那さんの介護を1人で頑張っていた奥さん。しかし、やがて限界を迎え、本人からしたら恥をしのんで(まったく恥なことではないのですが)「つらい」と助けを求め、週末1日だけ、お子さんに介護を代わってもらうことにしたそうです。

その1日を友人との食事や買い物、大好きな映画鑑賞など、自分のリフレッシュの時間にあてることにしたのです。

はじめは、休むことに罪悪感を覚えたり、旦那さんからは「自分だけ楽しんでいいなぁ」と嫌味を言われたりもしたそうです。

ですが、休みを挟むことで、日々の介護をおおらかな気持ちでできるようになり、旦那さんの小言もやさしく受け流せるようになり、関係性もよくなったそうです。

周囲に助けを求めるための1本の電話や相談といった「ちょっとした行動」には、高いハードルがあるのもよくわかります。

「家族の面倒は私が見なきゃ」という目に見えない使命感、「家族なのだから面倒を見るのは当たり前」と思われているのではないかという「思い込みのプレッシャー」によって、ついつい1人で介護を背負いこんでしまっている。

そういう方は、非常に多いように見受けられます。

なぜでしょう。

それは、これまでの長い介護の歴史からくる、ある種のしがらみのようなもののせいなのかもしれません。