「おそらくすべての人が大なり小なりこうした無意味な仕事もどきを作りだしている。本当の責任はすべての人にある」(写真提供◎photoAC)
2023年に発表された世界幸福度報告書で、日本の幸福度ランキングは137ヵ国中47位でした。前年より順位が上がっている中、仕事や家庭、恋愛、老後などうまくいかずに悩んでいる人も多いのでは。経営学者の岩尾俊兵氏いわく、「一見経営と無関係なことに経営を見出すことで、世界の見方がガラリと変わる」とのこと。今回は、仕事との向き合い方についてご紹介します。新人が営業先で顧客の信頼を失ってしまったとき、どのような対応をすればいいのでしょうか。そこから見える、無意味な仕事が生まれてしまう要因とは――。

組織の現状

もちろん新人に対して社会人の自覚を持たせるための叱咤激励は必要だ。

だがそれは「三手目」でいい。一手目はとにかく顧客の信頼を回復する策を練ることだ。二手目はこうした事態が起こった要因の分析と、営業活動が上手い課員の成功要素を抽出して他の課員(特に新人)と共有することである。

そうした対策を練らないと何度も同じ失敗を繰り返すだけだ。たとえば、自動車の運転においても、「事故を起こすな」という標語は何の意味もない。「飲んだら乗るな」「スピード出しすぎ注意」といった事故原因の分析に基づいた対策標語こそが必要となる。仕事もこれと同じことだ。

それどころか、変えられない過去を責め続けると、次から失敗は巧妙に隠されるようになる。失敗は上司が気付いたときには取り返しがつかないほどに肥大化するようになる。

ここまで読んで、自分もこれまで仕事ではない何かを作りだしてきたかもしれないと気まずさを覚える人もいるだろう。その何倍もこうした何かに苦しめられてきた苦い記憶を思い出した方も多いだろう。

残念なことに、むしろ無意味な何かを生み出すことを仕事だと思っていたり、恐ろしいことにこれこそが経営だと思っていたりする人もいる。